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maybe,YES.はYESではない

私は一つの実験を始めた。

マッチングアプリのプロフィールに「深い信頼関係が築かれてからじゃないと、恋愛感情もそれ以上も持てません。お互いに言語で自己開示して信頼できる人だと確信できなければ、お会いしたり通話したりは難しいです。」と書いたのだ。

私がこのようなプロフィールを書くに至ったのは何故か。マッチングアプリで病んで男性不信にはなったけど、男性嫌悪はしてないし誰かと精神的に深く繋がりたいからだ。

マッチングアプリをしていたら性的同意なんて確認されずにホテルに連れて行かれる、なんてことがしょっちゅう起こる。ホテルに入った時点でYESと判断されるのかもしれないけど、現実世界で会ってる時点で私は「この人いいかも」と思ってるわけだし、「断ったら嫌われるかも」とも思っている。その考えからの「maybe,YES.」くらいの反応である。でもそれって全然「YES.」ではない。(それとは別に断ったら何かされるかもしれないという恐怖もある。)

用心しても「maybe,YES.」の展開に何回もぶち当たり、その結果その相手とは2度と連絡は取れなくなる。勝手にワンナイトの相手にされたのだ。いい加減マッチングアプリは嫌いになった。これは女性が搾取されるアプリだ!とも思った。恋活アプリはいつから下半身マッチングアプリになったんだ?と憤ったし、あんなに色々深い話までしたのに本当は彼は身体にしか用はなかったんだ私である必要性は微塵もなかったのだと落ち込み、吐き気すら感じ寝付けなくなったりもした。

性行為から始まる恋愛もあると思う。
でも私は今まで、見た目はタイプでもないのに20kgダイエットを監修してもらって「これが初恋!」と叫びたいくらいの片想いをしたり、躁になって能動的にワンナイトを経験したり、恋活で騙されて鬱期に突入したり、お見合い婚活で1時間笑顔を貼り付けて噛み合わない会話をこなしたりと色々経験して、自分がデミロマンティックでデミセクシャルだと感じた。深い信頼関係を築いてからでないと恋愛感情を持たないし、性的欲求も持たない。

お互いが言語で自己開示して、ある程度の相互理解があって信頼関係が築かれる。私は特にマッチングアプリで知り合う人には「私の頭の中見せるから、あなたの頭の中見せて」と強く思っている。そして私は割とオープンマイハートしてはいる。(オープンマイヘッドでもある。)

何故ならば、女性はマッチングアプリで知り合った人と実際に会うにはリスクを感じざるをえないからだ。男性側もリスクを感じているかもしれないが、ここでは女性である私が感じるリスクについて主に述べる。
よく知らない人と会うのは割と怖い。

何をされるか分からない。トイレに立った間に飲み物や食べ物に異物を混入されるかもしれない。食事中や隣を歩いてる際などに断りもなく身体を触られるかもしれない。いきなりホテルに誘われるかもしれない。

そんなに心配でたまらないならマッチングアプリに向いてないと言われたらそれまでだけど、そんなリスクを感じていることは最低限相手には知っていて欲しい。相手を疑っていると言うよりは、信頼できるほどの情報をあなたも私もまだ得ていない、というのが事実だ。

「文字ならいくらでも嘘がつける」。用心している私に向かって、実際にこう言ってきた人もいる。そうはそう、確かにそう。でも、言葉を尽くして言動で示して、信頼して欲しいという姿勢こそが信頼に繋がるでしょう。

男性側がどんなリスクを感じているか私は分からない。女性と会うのが怖い男性もいると思う。それは人それぞれであり、理由も様々だ。
「男と女」と大きな主語であっても「個別の男と女」であっても、会話による相互理解がまだまだ不十分だと思う。

私は恋愛感情を持つし性的欲求も持つけど、アロマンティックの人だって恋愛結婚ではない結婚がしたいかもしれないし、アセクシャルの人だって恋愛がしたいかもしれない。そんな色んな性質のある人が安心安全に、無駄に、無闇に、傷つけられずに人と繋がれる世界になったら良いのに。そう思う。

性的同意だけじゃない。あらゆることについて、応えは「NO」と「YES」だけではないということ。そして、それがつまり「NO」と「YES」のどちらなのかということ。

社会的なジェンダーの問題、個々のバスタオルを洗うタイミングの問題。結婚するならどちらの苗字を名乗るのか、デートの食事代はどちらが支払うのか。

全てにおいて「maybe,YES.」は「YES」ではないのだということ。それを理解するのが生きやすい世界への近道なのだと思う。
Yeah, surely.

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このエッセイを書いた人

エッセイスト/ジェンダー、雇用問題、メンタルヘルス。身体が弱すぎて人間に向いていない。

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