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渋谷のバイブバーに行ってきた

2022年の9月下旬、閉店するという知らせを受け急遽「バイブバー」に駆けつけた。
「バイブバー」とは、渋谷にある、例えばバイブやローター、ディルドなどと言ったようなアダルトグッズを沢山見比べたり触り比べたりしながらお酒を飲むことが出来るコンセプト・バーだ。
お店の内装自体が既に昭和ラブホのような派手さと景気の良さを醸しており、他にはない魅力があった。いつかそこに行ってみたいとは思っていたものの、「いつか」のまま放置してしまっていたので、2週間前ほどになって急に閉店の知らせを聞き、そのまま行くことになった。
……のだが、行ったと言う事をまだ人に言えてないしSNSの海に放流することも躊躇っている自分がいる。

私自身は下ネタがすごく好きだ。というか、セックスの話も生理の話もオーガズムやマスターベーションの話も、心身の健康と強く結びついているので忌避するべきではないと言うスタンスでいる。
ご飯の話をするのと同じテンションで性の話をしたい。ドラマ『セックスエデュケーション』の感想を皆で語り合いたいし、それをする事で「ふしだら」だという烙印を押されたくない。

でも、実際はそうは出来ていない。
話をしたいな~と思いつつも、いつも周りがどう思うか、引かないか、という事に注意が行って話しづらくなっている気がする。

いつも非対称に思うんだけど、どうして男性が下ネタを楽しくするのと同じテンションでそれが出来ないのだろう。

女性として社会に生きると性欲を隠すように躾けられる

楽しく下ネタの話をしたくても、女性として社会に生きる人間の性は不自由だ。
下ネタの話をする以前に、女性には性欲が無いものだと思われている
本来性欲に個人差はあれどジェンダー差はない筈なのに、女性は性欲を隠せと教わる、教育されて、躾けられる。(漫画『わたしたちは無痛恋愛がしたい』にもそういった描写が有ったように思う)

「私には承認欲求などありません」/そんな顔して生きるのがすっかり上手になりました/そもそも欲を隠すのは「女のマナー」だから/そうやって欲を上手く隠せなければ笑われる。「みっともない」ってね。

『わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』瀧波ユカリ著 1巻 第3話

女友達とオナニーの話がしたくても、私の経験上、話を振ると「したことない!」と言う人が多かった。男性だとして当たり前だと思われているのに、女性だと「するなんてエッチだね」みたいに存在自体が淫らみたいなことにされる不条理、非対称……。

また、女性からセックスの誘いをする事にも、拒否感やためらいを覚える人は少なくないと思う。
柚木麻子の小説『BUTTER』では女性で男性と交際している主人公が、普段は相手の誘いに乗るだけの所を初めて自分から誘った事で不安になっている様が描かれている。

恋人を誘うだけで、これほど後ろめたくて恥ずかしいのはなぜだろう。
(中略)
自分から動いただけで、こんなに緊張している。拒絶されたらどうしよう.欲求不満だと思われたらどうしよう、とそればかり考えて落ち着かない.この部屋のどこかに小型カメラがあって、その向こうでは沢山の知人が大笑いしている気がする。

『BUTTER』柚木麻子著 文庫版p173

自分の性器を見たり触ったり愛したりすることすら忌避されているのでは?

それから、友人と性の話をしている時に「そもそも自分の性器を触ったことがない」という人にもちらほら出会う。見たことがないとか、指を入れたことが無いとか、タンポンを入れるのすら怖いとか。
そういう話を聞いていると、まるで皆自分の性器が嫌いなように思えてくる。

Netflixのリアリティーショー『ザ・ジレンマ』(性欲もりもりのシスヘテロ男女が性的接触なしに恋愛関係を築くことが出来るのか?という企画)で、女性達が自分の性器を観察して絵を描くことで自尊心と団結を高めよう、という趣旨のワークショップ「ヨニ・プジャ」があったことを思いだした。
性に開放的な彼女たちでも自分の性器を直視した経験があまりなく、それまで愛せていなかった。だからこそ、このワークショップを通して自分と向き合うことができ、また他の人の話を聞き涙を流す人もいた。

上記はシス女性として生きてきた人達の話だけど、きっとジェンダー関係なく、女性器や女性の性に関わる内容は忌避されタブー視されているのだろうと感じることがある。

「ちんこ」という言葉は普通に言われるのに、それと同じ温度で「まんこ」とは言われないこと。(私も文面では書けても発音は恥ずかしい。なぜ?)
Instagramでは女性の乳首をアップすると性的なものとして消されるが、男性の乳首は余裕でパスすること。
アダルトショップのエムズには男性器を模したアクセサリーや雑貨が置いてあるが、女性器のそれは1つも見当たらなかったこと。(2022年夏頃時点)

男性器はよくネタにされて面白くてカジュアルで市民権を得ているが、反対に女性器は見たくも聞きたくもない。そう言われているみたいだ。

社会全体の女性の性へのタブー意識を弱めたい

もっと自然に性の話がしたい。

性の話は女性のリプロダクティブライツの観点から見ても大切だし、何より楽しい。
コンドームやアダルトグッズの世界は知れば知るほどクリエイティブで意味が分からなくて、誰かと共有したくなる。
例えばコンドームだと、チョコレートの匂いがするものや、色々なカラーリングのもの、浮世絵の絵柄がついているものなど「なんでそうなってるの?!」と思わず突っ込みを入れたくなるものが数々あって楽しい。
アダルトグッズもそんな感じで、見る人間の想像を超える「変なもの」が沢山あるから、友達とか誰かとゲラゲラ笑いながら楽しむくらいが丁度良いと思う。
本当に、見ていて飽きない。

バイブバーの内装は、入り口や柱、トイレ、机や飲み物のストローに至るまで全部が露骨にさりげなく性器モチーフになっていて、最高にくだらなくて、まるで天国だった
下ネタを楽しく思うのは単純に私の趣味だけど、それにしても「恥ずかしい!」「タブーだから」と言って忌避するにはあまりにも楽しすぎる世界。

下品なものは楽しい。もっと話したい。話そう。
楽しく話したいから、もっとそういう話を自然にカジュアルに受け止めることができる人が増えて、女性の性へのタブー扱いが薄まって消えて無くなるといいと思う。

■追記(2022年11月9日)
このエッセイを書いた後、「やっぱり人に言えないでいる自分嫌だな」と思って自分のInstagramに投稿しました。自分的にぶちあがった話をタブー意識薄めに喋れるって楽しい。

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このエッセイを書いた人

they/them ノンバイナリー。はっぴーくぃあぎゃる。

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