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ほしいろといき
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ねえ困惑するんだけど、「教育に悪い」髪の毛の長さってなに????

以前、教育系のボランティアをした時に、ボランティア先の学校の教員から「髪の毛が短すぎて教育に悪いから、もう来ないで欲しい」と言われた。

最初は「髪の毛切りすぎたね」とかいう、極めて遠回しな指摘だったと思う。でも、それを私が意図を理解しかねて、向こうも説明を重ねていたら、最終的にはそういう主張だということが判明した。

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「髪の毛が短すぎて教育に悪いから、もう来ないで欲しい」

「髪の毛が短すぎて教育に悪い」の「教育に悪い」というのは、彼らに言わせれば「見て真似をした生徒がもしいて、高校受験に失敗したら責任が取れない」という意味だそうだ。

あまりにも仮定の話すぎる上に、もし仮に外見を理由に受験で落とす高校があるとするのならば、その高校が差別をしているというだけの話だと思う。悪いのは差別をしている高校であって、どんな髪の毛でも問題ないと教える中学では勿論無いはずだ。逆に中学の責任だと言う人間がいるのなら、とんだ八つ当たりではないだろうか。

差別を「そういう世界なんですよ」と言い肯定する教員からすると、こうやって納得出来ない様子でいる自分の方が反乱分子なのだろうなと思う。
今回の件で様々な教員に相談して回った結果、年代が高い教員にはそういった考えが比較的根付いている傾向にあることがわかった。それでも「そういう世界なんですよ」と思考停止で迫ってくる人間に囲まれると、まるで納得出来ない自分自身が問題であるかのように思い始めてしまう。

こういうのは「郷に入っては郷に従え」という事なのだろう。
それでも、「女らしい女」と「男らしい男」しか許さない現場が本当に教育に良いのか?と疑問に思ってしまった。

「女性らしい」髪型が精神的に苦痛だった

当時の自分は本当に髪の毛を伸ばすことに耐えられなくて、ずっと切っていた。

性被害に遭ってから、正確には遭ったんだと気付いてから、髪の毛を女らしくする事が精神的にきつくなっていた。だからずっとそうしていた。(今でこそノンバイナリーの自分にとって髪の毛が短い方がしっくりくるという理由でそうしているが、当時は上記の理由の方が強かった。)

フェミニズムの理論を知って「自分は悪くない」と頭では分かっていても、「女だから被害に遭った、狙われた」という事実(女性の方が男性に比べて性被害に遭いやすい)に耐えられなかったのだ。

フェミニズムに出会ってから「あれって性被害だったんだ」と思い当たる事例があまりにも多くて、2,3年ほど心を病んでいた。

あのときの私は本当に髪の毛を女性に見える長さにする事が苦痛だった。美容院を予約する間もなく、ある日耐えきれずに家にあった動物用のバリカン(それしか無かった)を使って髪を刈り上げた。

伸ばすにしても、たとえば黒髪でなくて、髪の毛を奇抜な色に染めるので有れば、それは私の中では「女らしさ」から外れていたから出来た。
でも、教育実習やボランティアに相応しいとされる地毛の色で伸ばすのは無理だった。当時の苦しみがフラッシュバックしそうであまりにもしんどくて。

そういう事情、わかってあの担当者は教育に悪いって言ったんだろうか。分かってなかったのだろう。想像すらしていなかったのだろうと思う。

「事前に言っておけばまた結果は違ったのかも知れない」と相談した先の教員が言った。傷付いている現在進行形の生傷を晒して委ねれば?
確かにその方が円滑に物事は進んだかも知れない。と他者目線で見れば分かる。けれど理解されないリスクのある傷付きを開示して、それが適切に理解されるとは限らない時、自分の柔らかい部分を晒しにいくリスクをいつでも誰でも負えるだろうか。私には出来なかった。

「教育をナメてるよね」と担当教員に詰られた。でも、ナメてるとかナメてないとかじゃなくて普通に無理だった。

多様な人間を受け入れられない教育現場

精神的に傷を負っている人間が大学に来るな、とそう思われるかも知れない。でも、そういう人を排除する教育って一体何なのだろう?

改めて考えてみても、常識的に考えて髪の毛が短いくらいで教育に悪いとか、無いと思う。

今では単純にその担当教員の好みだったのだろうなと解釈している。
そう考えても、相手の好みに合わせて自分の見た目を変形させなければいけないということ自体が人権侵害だと思われるし、別に私みたいに特別な事情を抱えていなかったとしても、やっぱりおかしかったなと思う。

「おかしいと思うなら尚更頑張ってあなたの手で変えていかないと」と言った教員もいた。でも、もう疲れた。排除されて、そこから体験した内容を言語化して問題提起をして、課題解決をするまで、全部一人でやろうとしたら疲れた。
だからもう、私よりも元気で傷を負うリスクが低くて社会をよくしたいと思っている皆さんが、私の代わりに頑張ってください。と教職に進む知人に零したら「私も自分が可愛いから……」と逃げられた。

しばらくはこの問題どうにもならないし、「男らしい男」や「女らしい女」になれない教員志望者達は排除されることで教員の道から外れていって、そこに違和感を抱かない限られた人しか教員にならないで、また「教育に悪い」という言葉で多様な人間のあり方を狭めていくような人材が育成されていくのかな。
そうして何も変わらないまま、私たち適合できない適応できない人間達の屍がひっそりと積み重なっていくんですね。
地獄。

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このエッセイを書いた人

they/them ノンバイナリー。はっぴーくぃあぎゃる。

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