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よくヒゲを剃り忘れる私の話

あ、ヒゲが伸びてる。

出かける支度をしていて、鏡の中の自分を見て気がついた。
口元の、左右両端部分に斑に生えている、長さ2ミリ程度の黒い毛たち。
さほど目立つものではないし、生活に支障をきたすことは一切無い。だから、こうやって気がつくくらいに伸びたり気になったりするまで放置している。

腕毛は生えている方が落ち着くし自尊心が高まるのに、ヒゲは生えているのを見られたらと思うとそれだけで少し居たたまれなくなるんだよな。そんな自分のこと、改めて考えてみるとよくわからない。

考えているうちに、今の交際者と付き合う時に「私体毛剃らない派だし、ズボラだからヒゲ剃り忘れたりするよ?いいの?」と事前に申告していたことを思い出した。体毛を剃らないことと、ヒゲを剃らないことは自分には別だったみたいだ。
普段から「毛深い=かわいい」というロジックで自分の家の猫や自分の足や腕の毛を愛でている。私にとっては、毛むくじゃらの猫を愛でることと、ありのままに毛が生えた自分の肌を受け入れることとは一緒に思える。でも、どうしてそれと同じロジックで、自分のヒゲは許す事ができないのだろうか。

ヒゲを見られると居たたまれなくなる。

それは、他の女の子や人間の顔にヒゲが生えているのをあまり見たことがないことも原因にあるのだと思う。女性だとまず生えてないし、男性でも伸ばしていたり伸びていたりするのを見る機会は私の周りではあまりない。
見たことが無いからおそらく皆、ちゃんと処理しているのだろうなと思う。そう思ったときの、自分の処理してなさ具合を思って落ち込むのだ。

ヒゲを剃らないと「ちゃんとしていない」ように自分が思えてくる。
腕毛の時以上に「ちゃんとしていないと思われそう」と感じている。

だから伸ばしっぱなしの腕毛と同じように「毛を剃り続けることは合理的じゃないし精神的に病むから、社会の規範に逆らってでももう剃らない」とはならない。
だから、多分これからも伸びてるのに気がつく度、剃り続けると思う。

でも、なんでヒゲを剃るのがマナーなんだろう。

すぐには答えが出ないし自分の中では分からないから今はどうしようも無いけれど、それが気になって少しもやもやした。
マナーじゃなかったら、私が剃り忘れても困惑したり恥に思ったりすることは無いのに。

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このエッセイを書いた人

they/them ノンバイナリー。はっぴーくぃあぎゃる。

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