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消滅可能性都市の本当の少子化対策とは。

私の地元はとても田舎である。
勿論と言ってはなんだが、消滅可能性都市である。

(消滅可能性都市とは日本創成会議」が2014年の5月に発表した資料で、2010年から2040年にかけて20 ~39歳の若年女性人口が5割以下に減少すると予想される自治体のことをいう。)

そんな田舎で一昨年2021年、上野千鶴子さんの講演があったのはとても驚いた。当時は実家療養中だったので私はその講演を聞きに行ったのだけども、その講演でも消滅可能性都市の話が出た。
自己紹介で「Twitter市長です」と名乗っていた市長は「女がこぞって出て行く町は滅ぶ」と上野先生が話すその講演を聞きながら自分の采配をどう評価していたかは謎だが、私の地元で12年間続いてきた少子化対策目的の「官製婚活」がその年に打ち切られた。

この市長は市議会議員とバチバチにやり合ってて地方新聞から地方のテレビ番組でもまあまあ話題になっている人なのだが、市民からの評価も厳しい。
その批評を聞くたびに私はうんざりしてしまう。
論点が「これだから独身は」なのだ。ことごとく。

「嫁さん居ないからシャキッとせんのよ」
「結婚してないなら半人前よ」
「言いたい放題でやりたい放題なのは手綱持ってくれる奥さんがいないからだろう」
「愚痴聞いてもらえる嫁さんおらんとやっとれんのじゃないか」

オエエエエエ!!!!である。
独身か既婚者かという話は市長の仕事ぶりに全然関係ない上に、批評で出してくる「市長の配偶者像」が古の「妻とは」「嫁とは」の価値観過ぎる。

市長は、多分こういう声は市長になってから山ほど聞いてきたし、直接言われてもきただろうし、それをどうにかしたいと思ったんじゃないかと私は思った。
インタビューを受けていた大手新聞社のネット記事は途中から有料だったので全ては読めていないが、「多様な人たちへの配慮が欠けている」と廃止を決めたとあった。
消滅可能性都市である田舎の人口3万人に満たない市の少子化対策の官製婚活を廃止した市長。
ちなみに「官製婚活」を廃止した2021年に、この市ではパートナーシップ制度を開始している。
私は英断だったんじゃないかなって思う。

私の中に「田舎だから」という偏見がある可能性は少なからずあるが、田舎では男尊女卑の価値観や伝統的家庭観を持つ人は体感的にも確かに多い。
嫁姑問題や真の敵は配偶者な問題を母が愚痴っては慰めてくれていた比較的話も分かって仲の良いあの親戚が、心底気の毒そうな顔をして「良妻賢母を持たない市長」をこき下ろす。
官製婚活を続けていても、この価値観が根深く強い地域や家庭での結婚生活は無理だと「それを耐えるくらいなら未婚・非婚が良い!これでは結婚したくない!」と思う人も多いだろう。
その理由を正さないと婚活は意味がない。
女はこぞって町を出て行くと思う。

ちなみに昨年の地元の市役所の採用試験のエントリーシートには「この町が世界一住みたい町になるにはどうしたら良いと思いますか?」という設問があった。
まず地域の人々のマインドの改革・人権に対する意識のアップデートが必要だと思うよ、恋愛も結婚も出産も義務ではない、そして義務ではないが望む人には障害なくそのステージに挑める環境であるべき、そのための第一歩が官製婚活の廃止だったよね。
私はそう書いてみたい。

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このエッセイを書いた人

エッセイスト/ジェンダー、雇用問題、メンタルヘルス。身体が弱すぎて人間に向いていない。

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