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ほしいろといき
ほしいろといき

陰日向

職場

 真夏でもクーラーのない仕事場に,アラ還の母が発つ。ふいに「今日はパートの人たちで工場のトイレ掃除やんなきゃいけない」って言った。「給料でる?」「出るわけないじゃん」。 無償労働(アンペイドワーク)が,賃労働(ペイドワーク)中にされている。そして,ケアワークであり,上の人たち(おじさん)からパートの人たち(中年女性)に向けられている。「やんなきゃいけない」強圧的なものであり,自発的(ボランタリー)ではない。すなわち,ボランティアでさえない,日向で行われるシャドウワークだ。自然には日向に影はできない。

中学

 中学校の掃除時間。よく女子が掃除ロッカーから男子たちにホウキやチリトリを配る係だった。決められた係で行う配膳係ではそんなことなかったのに,ノリで配役されるとこう。卒業して気づいた。不自然なふるまいが自然にあった。イデオロギーはノリ(空気)として充満して,生徒はそこで息をしていた。        

 地元の荒れた中学校だった。掃除用具を出し入れする時間,1年の女子が男子たちからいつも「どけ」と指や声で指示され,切ない顔で動いてた。私がある日たまたまそのロッカーを使おうとした。その子がいた。「ごめんなさい!」と言いながら俊敏によけた。「いや全然いいって!そんなそんな!」って言った。その以来話すようになった。手紙をくれた。どうして好きになったのか何か月が経って訊いた。掃除ロッカーの前にいて邪魔だったのに優しくしてくれて好きになった,とのことだった。

結び

 こういうふるまいが拡大再生産されて,職場(実社会)へと敷衍するんだろう。学校は会社の縮図で,教育は社会の縮図だ。1つ1つの指示と指の動きで複雑な形が完成してしまうあやとりをほどくみたいに,しかるべき動きをしないとと思う。

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このエッセイを書いた人

理不尽さについて聴く、書く、考える、話すことができたらと思う|フェミニズム、セクマイ、ジェンダー、ハラスメントなどなど

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