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ほしいろといき
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拝啓、親愛なる通りすがりのあなたへ(脱毛の圧が嫌なので一緒に脱毛から距離置きませんか)

拝啓、
親愛なるあなたへ

お元気ですか?
こんにちは、もう春ですね。
暖かくなってきて、日差しも出てきたし、今年はミニスカートが流行っているので履いている女性がちらほらと散見されるようになってきましたね。
夏が近づいて薄着になってくると、気になるのは脱毛問題ですよね。電車の中吊り広告とかで脱毛しろって、そりゃあもううるさくて鬱陶しいったらありゃしないですよね。「脱毛して綺麗な肌になろう!」とか書いてあったりもして。「それ、素肌は醜いって暗に言ってるんですか?」とか広告の作者に突っ込んで詰めまくりたくなるような広告ばかりでもう……。うんざり。
ところであなたは、脱毛、する派ですか?
ちなみに、お察しの通り私はしたくないし、してないんですよね。

この社会には「女性は脱毛をするのが当たり前」という社会規範があるけれど、私は脱毛をしない生活を送ってます。
いや、どうしてしないの?って思いますよね。昔は私もやってたんですよ。「身だしなみ」として脱毛を強要する圧に負けて。

中学に上がると同時くらいに母親から剃刀を与えられたり、たまにしか会わないような親戚のおばさんからも「毛を抜くと生えてこなくなるらしいよ」(絶対デマだと思う)という言葉と共に毛抜きを贈られたりして、「あー脱毛しないと恥ずかしいんだ……」と子供心に察し、やりました。

でも、脱毛ってとにかくコスパが悪いんですよね。

剃刀、怪我するじゃないですか。刃を強く当てすぎてしまったり、勢い余って変なところを引っ掻いてしまったりして、それであーやっちゃった……って自己肯定感が下がるんですよ。
それで、剃った後でも数日したらすぐ毛が生えてきて、また同じ事の繰り返し。
それに剃って、見た目がつるつるになったとしても、毛の流れに逆らって肌を触ると、ものすごくじょりじょりするんですよ。辛くないですか?
滑らかな方が良いに決まってるのに、身体にこすると攻撃的になる部位を人工的に自ら作るって、それどんな拷問なんでしょうか。どんなテンションでやれば良いんだろう。とにかく私には耐えられなかったです。
それで、じょりじょりしないように除毛剤を使うという手もあるけれど、あれ、ものすごくお金がかかる上に完全には毛が取れなかったりして。自分いま一体何やってるんだろう……って虚無になるんです。
だから私は、脱毛という行為自体が自傷行為だなあと感じていて。身も心も(場合によってはお財布も)傷付くんですもの……。

脱毛をしていない自分の方が、脱毛をする自分よりも自分のことを大切に出来ている感覚があって、私は脱毛から遠ざかりました。

ていうかそもそも、社会的には「毛が無い女の子の方が好ましい」とかされてるけど、それ無理だと思いませんか?
人間だからていうか生きてるから、毛は無限に増産されるものだし。それで「理想に近づけない……」って悲しくて辛くてメンタルがボロボロだった日々が私にもあったけれど、そもそも理想自体が無理あると思うんですよ。

女性を人間扱いしていないからこそ押しつけることのできる「理想」だなと。

はあ~~~~なんだか熱く語っちゃいました。でもこれ、熱く語るべき事ですよね。
今でこそこの社会では「脱毛して当たり前」とか圧かけられて、脱毛の広告が鬱陶しいくらいに沢山溢れているけれど、脱毛しないという選択肢がもっと尊重されるべきだし、脱毛しない女が私やあなたの身の回りとかにもっと増えて溢れたら、最高だと思います。

今は「毛が無い方が美しい」という価値観が主流で、逆に人々が脱毛しない女性を見慣れていない所為で、自分でも戸惑ったり周囲に戸惑われたり何か一言余計なことを言われたりとか、そういう事があるかも知れない。でも、私は脱毛を強制されることにうんざりしているし、もしあなたも同じように思ってくれているのなら、私と一緒に脱毛をしないことを選択してみて欲しいと思うんです。

すぐに慣れるのは難しいだろうから、まずは一週間伸ばしてみて、限界を感じたら剃って、とかそういうのを繰り返して。少しずつでも、そのままの自分を自分で肯定できるようになってきたら、それに超したことは無いと思うから。

そんな試行錯誤を繰り返しながら、お互いこの脱毛の圧がすごい世界で、精一杯健やかに過ごしていきましょう。 敬具

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このエッセイを書いた人

they/them ノンバイナリー。はっぴーくぃあぎゃる。

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